詩の朗読再生
No.22 (1968年、30歳。夏、妻子が不在の家で)
妻子を恋う男
(セメント彫刻、79.0×37.5㎝、奥行14.0㎝)
何と言う孤独と静寂だ。
家の中から、子らの声と生活の喧騒が無くなり、物音一つしない。
僕は、一人、ぽつねんと、彫刻を彫る。
妻子が不在の家で、僕は、人としての感情を失ったミイラだ。
胸には固い板をはめられ、心臓の鼓動は止まり、全身の肉は干からび、血は一滴も流れて居ない。
体には、人間らしい優しさも感情も、無い。
妻を愛し、子を慈しむ、優しい感情よ。
僕の体と心に、戻って来い。
お前達の愛で、僕の全身を、瑞々しく包み、豊かな生命力で、潤してくれ。