詩の朗読再生
No.86 (1985年、47歳9ヵ月)
学校挽歌
(落合「紅寮実験ギャラリー」で制作したレリーフ・セメント彫刻、176.5×46.0㎝、奥行20.0㎝)
僕の周りを、偏差値、データーバンク、一流といわれる国公立大学への入学者数、一流企業への就職率、という妖怪が取り囲む。
生徒は、防護服を着た受験戦争の復員兵。学校は、傷病兵や戦病者の収容所。
教育現場は戦後処理機構。
教育の荒廃。
僕が勤務する学校には、草木が生える余地も無い。
生徒も教師も、誰かわからないように、顔を隠し、防護服を着て、酸素マスクをはめて、やっと、生きている。
僕は、その学校へ、20年以上も、勤めている。
僕は、学校挽歌を歌う。
悲しみと憎悪と恨みを込めて。
学校は、生まれ変わらなければならない。
草木が、青々と茂り、花が咲き乱れ、生徒達は、素顔を太陽にさらし、自由な衣服を着て、闊達に跳ね回る。それぞれが、個性豊かに。
偏差値で評価され、卑下することなく。
僕は、学校挽歌を歌う。この悲劇は、終わりにしなければならない。
このレリーフを作った後、僕は再び、学校という戦場へ戻る。
僕は死ぬまで戦うしかない。
学校という戦場で。
挽歌を歌いながら。
自分の弱さや古さ、生きる苦しみを抱えながら。
さあ、もう一度、戦場へ戻ろう。
学校挽歌を歌いながら。