詩の朗読再生
No.85 (1985年、47歳9ヵ月)
同床異夢の苦しみ
(落合「紅寮実験ギャラリー」で制作したレリーフ・セメント彫刻、179.0×41.0㎝、奥行15.5㎝)
男は芸術を語り、女は医科学を目指す。
若い頃、男と女は、同じ夢を見た。
気が付けば、同床異夢。
男は美術教師で、彫刻家。
男は、二足の草鞋を履く苦しさに、大酒を飲み、自分の睡眠と命を食べて、彫刻を彫る。
男は、愛と優しさを求めて彷徨する。
優しい言葉をかける女に、ふらつく。
男は、自分の伴侶を裏切れない。
伴侶が悲しむことは、決して出来ない。
解っていながら、苦しみから逃れたい。
女は、男と別の道を歩く。
「家を火宅にしてはならない」と。
女は、小説を書く筆を捨て、医学論文をその手で書く。
病院で生き残る為に博士号を取ろうとする。
二人を隔てる川は深い。
二人は、背中を向けあって、今日も、眠る。
同床異夢。
愛するが故の苦しみ。
生きることの苦しみ。
同床異夢の苦しみ。
男と女の人生。