詩の朗読再生
No.84 (1985年、47歳9ヵ月)
人類の危機と空虚・球形の荒野で生き、信念を貫く
(落合「紅寮実験ギャラリー」で制作したレリーフ・セメント彫刻、180.5×41.0㎝、奥行37.0㎝)
ある人は、霊魂との対話が大切で、宗教こそが人を救うと声高に説く。
ある人は、核世界に対する抗議を叫ぶ。
何時の頃からか、人間はひたすら、地獄への門を目指して急ぐようになった。
天国への道は諦めて。
地球には、絶滅する象の頭骸骨が並ぶ。
人間が象牙を取る為に殺戮を重ねた成果。
絶望的な今の世界と時代。
地球は、球形の荒野。
僕は、球形の荒野で生きる。
妻と結婚し、家庭を作り、子をなし、自分が理想とする生き方を、人間の在り方を、人生の真実を、彫刻という形で追及し、表現しながら。
僕は、今日も、球形の荒野で、息をする。
生きるのがつらいからと言って、妻の仕事が多忙で、僕だけを見つめ、僕だけを愛してくれないからと言って、逃げてはいけないのだ。
それでは、あまりに寂しいではないか。
毅然として生きよ。
弱音を吐くな。
人類の危機と空虚。
お前は、球形の荒野で生き、信念を貫くのだ。