詩の朗読再生
No.41 (1973年、36歳)
胸の中に抱える大切なもの
(セメント彫刻、120.0×49.0㎝、奥行50.0㎝)
1973年2月、35歳の僕は、第3子を妊娠した31歳の妻と語った。
「君が、女子高の教師を、嫌がっていることは解っている。結婚当初、世間から君が受けた傷の深さも。僕は生きる為に、彫刻家の仕事と女子高の教師を続ける。君は、僕を信じて生き、耐えることが出来るのか」。
「あなたが、就実へ根を張って、頑張って下さったので、私と子と母が幸せに生きることが出来た。あなたが、簡単に仕事を辞める人なら、私は、病院で仕事を続けることは出来なかった。私は、スピーチセラピーの仕事に人生を賭けて生きる。協力して下さい」。
「君の29歳の誕生日に作った『日の見の像』は、僕の君への応援歌だ。君を支えて生きる気持ちは、生涯、変わらない」。
「独身時代の、万能感に満ちたあなたの良さを忘れない為に、世界を見て来て下さい」。
「胸の中に抱える大切なもの。君と岡大の部室で語った、『弱者の側に立って生きる』生き方や思想は、生涯変わらない」。
僕は、妻の言葉に背中をおされ、3月に1ヵ月間、ヨーロッパの美術館巡りの旅に出ることにした。