動画と詩の朗読再生
No.114 (1995年、58歳)
夫婦・たどり着いた境地Ⅲ
(セメント彫刻、上81.5×65.0㎝、奥行12.0㎝)
Tよ。
見てごらん。
手を結んだ、その間から、蒼い空が見えるだろう。
ほら、ずーっと向こうだ。
もう、かれこれ35年だ。
35年前、23歳の僕は、19歳の君を愛した。
あの青空のように、澄んだ心で。
君は、僕の心を、今でも信じることが出来るか。
これからも、手を握って、労りあって、生きて行けるか。
思い出してごらん。
岡大の傍の「泉荘」で同棲していた時のことだ。
僕が、なけなしの金をはたいて、季節はずれのスイカを買って帰ったことがあっただろう。
長女を妊娠中で、悪阻が酷くて、何も食べられなかった君は、スイカを泣きながら食べた。
その泣き顔を、スケッチしながら、僕は、「この人を守って生きよう」と、心から思った。
あれが、全ての原点だ。