詩の朗読再生
No.96 (1987年、50歳)
結婚25年目の二人(支えあって生きてきたのだ)
(セメント彫刻、72.0×29.0㎝、奥行13.0㎝)
僕は50歳、妻は46歳になった。
今年は、「銀婚式」の年だ。
若かった頃に、互いの頭上に高く掲げた理想だけは忘れまいと、懸命に生きた心算だが、違う職場で、別々の仕事をしながら、理解しあい、信頼しあって、25年の年月を生きることは、容易くなかった。
性格の違いや育った環境の違いも手伝って、諍いを繰り返した。
僕は、妻から、何回、別れ話を、切り出されたことか。
妻と結婚するまで、生活の苦労を経験したことが無かった僕は、酒に溺れ、現実から逃げ出そうとした。
幸い、子供達は、屈託なく成長した。
僕の彫刻は、人間の内面の苦悩や情念を表現する。
彫刻を作るようになって、僕は、表現者の辛さと苦悩を、日々、思い知らされて、生きている。
こんな二人が、25年を共に暮らした。
軋轢があって当然ではないか。
3人の子は、この父母に、その命を必要とされて誕生し、愛され、慈しまれて育った。
生きることに迷った時、父母の生き方は、必ず、君達の人生の指針になるはずだ。
僕は、25年の年月を、妻と寄り添って生きた事実を、彫刻として、残したい。
それは、僕達の25年の月日のメモリアルだ。