詩の朗読再生
No.32 (1970年、33歳)
二人の子を背負う男・立像
(セメント彫刻、172.0×40.0㎝、奥行57.0㎝)
33歳の僕は、8歳と6歳の子を背負って、生きている。
妻も仕事を頑張っており、義母も協力的で、家庭は、人並に幸せだ。
僕には、結婚前から、京大大学院で哲学を学びたい願望があった。
京大は、権力と闘って、思想の自由を守る為に獄死した学者を多数輩出した大学だ。
生活の安定と共に、学問への興味と情熱が再燃し、僕は、京大大学院入試に必要な第二外国語を独学中だ。
だが、大学院修了後、美術教師として岡山の大学へ再就職出来る保証は、皆無だ。
彫刻家として生きる為には、教師の職を失う恐怖は大きい。
一歩、前へ。一歩、前へ。
学ぶことを願望する自分を、鼓舞する声が聞こえる。
二人の子を背負った僕は、その一歩を踏み出せない。